novel

中村九郎『ロクメンダイス、』

《心は誰しも持っている、それだけが揺るぎない真実だと判断しました。》(あとがき) よってそれ以外の全ては不確かで、手応えがない。そういうノリ。 それでもまあ言葉(記号)は例外的に確かだが、意味のほうは定かでない。または、意味が定かでないにし…

中村九郎『黒白キューピッド』

「黒白」は「こくはく」と読ませていて、もちろん告白とかけているのだろう。おまけにキューピッドと来た。つまりエロス。恥かしいわボケ(そんなネタを思いつく俺が)。 正直、夏葉薫さんの書評に付加えることはあんまりない。メイジ可愛い、って言ってる人…

片山憲太郎『電波的な彼女 〜幸福ゲーム〜』

「わたしもお弁当作りに挑戦してみたいのですが、今のところ作れそうな料理といえば、スパゲッティくらいでしょう」 「まあ、あれは簡単だからな」 「やったことはありませんが、簡単だと思います。パスタを、お湯でふやかすだけですし」 「……ふやかす?」 …

中村九郎『黒白キューピッド』ばかり読んでる。ちょうど梅雨明けの頃に読めたので得した気分です。うん、いいものを読んだ。 いや正直最初に読み終えた時にはよくわかんなかったんだけど、いいものは一回じゃわからないんだよ、と炎尾燃も言っている。なるほ…

早見裕司『世界線の上で一服』(e-NOVELS)

『世界線の上で一服』がでーたぞっ。 http://www.so-net.ne.jp/e-novels/ http://www.so-net.ne.jp/e-novels/nov/h001/h0010023.html えーとね、おじさんが女子高生に叱られたり足を踏まれたりしながら東京を巡る話。たぶん。 早見裕司氏のサイトはこちら。 …

谷川流『絶望系 閉じられた世界』

『ジサツのための101の方法』かと思ったら『嬌烙の館』だった、みたいな。あと死神たんはわりと普通に萌えました。口調がちょっと『語り手の事情』のルーみたいで。根っこは逆だけど。 実験作とは言っても野心的という意味のそれではなく、思いつくままに書…

柴村仁『我が家のお稲荷さま。』4

満ち足りた。 そんなわけで、夏休みの次は神無月が通り過ぎる、つまりはただそれだけのお話。十二歳の少年は日々変わってゆくのです。 言葉にならない機微、あるいはありふれた話だからことさらに言葉にする必要も意味もない、そんな機微をうまくとらえた作…

谷川流『涼宮ハルヒの動揺』

そろそろ童心とか秘密とか知恵とか不信とか醜聞とか言いたくなるね。つまり、探偵モノのシリーズが続くのと同程度には続くのが当り前で、もはや終わることの方が特別であり事件である。いつ世界が終わってもおかしくないあの状況下で、これはいっそ奇跡的な…

天敵、来襲!

なんか引っかかると思ったら、「天使/来撃」と「使徒、襲来」が混ざったようなオビだわね。というのがりすか2巻なわけですが。いやまあ、作品の感想なんて、このバカップルが! ってなもんですけどね。ところで、「めそめそと情けない」(p83)なんて言わ…

清水マリコ『ゼロヨンイチナナ』

明智くん好きすきー。 清水マリコの描く男の子の魅力について誰か言語化してくれないかしら。妹や弟がいて、年下のガキのあしらい方を心得ていて、不思議な話に対して適切な距離が取れて、ごはんがつくれる。そんな感じ。あんまりかっこよくないくせに、妙な…

学園/アジール

《人間をその出自からも、身分からも、階層からも、信教からも解放し、その差別意識を廃し、知的閉域からの自由を得させるための「逃れの街」、「アジール」であるというのが学校の重要な社会的機能の一つではないのか。》(http://blog.tatsuru.com/archive…

http://i-sunday.net/diary0502.html#23 ヴィクたんは僕の脳内ではちゃんとしわがれた声で喋りますよ? あの声はたぶんパイプと同程度かそれ以上に重要なので、なにせ灰色狼ですから。 僕の脳内のイメージに似たものを現実に探すと、宮崎アニメの老婆、水原…

岡田剛『ゴスペラー 湖底の群霊』(ソノラマ文庫)

http://www.asahisonorama.co.jp/hp/bunko/bottom.htm 端的に言ってハックルボーン神父がシックスセンス、十三歳の少女の日記つき。あと、『ニキータ』とか『レオン』が好きな人向け。マッチョで朴念仁な神父さんが勝気な女の子に振り回されたり生きることを…

めった斬りブックガイド既読調査

43項目でした。 001 (1977-p121-d),《クラッシャー・ジョウ》高千穂遙(1977〜) 003 (1980-p122-d),《ダーティペア》高千穂遙(1980〜) 004 (1981-p123-d),《星へ行く船》新井素子(1981〜1992) 006 (1982-p125-e),《銀河英雄伝説》田中芳樹(1982〜1988…

桜庭一樹『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet』

法月綸太郎『密閉教室』、の島田荘司による解説(調べてみたら解説じゃなくてノベルス版巻末の「薦」でした)、みたいな話。チャンドラー・マニアの主人公のセリフは日本の高校という場所ではひたすら空回りするよりなく、とか、刃が立たぬ巨大な筋肉に切り…

ライトノベル好きに「初めての○○」10の質問

募集されてるようなので。義を見てせざるは勇なきなり。 初めて読んだ角川スニーカー文庫作品は何ですか? ──秋津透『魔獣戦士ルナ・ヴァルガー (1) 誕生』 初めて読んだ電撃文庫作品は何ですか? ──高取英『聖ミカエラ学園漂流記』 初めて読んだ富士見ファ…

清水マリコ『ネペンテス』

読了。天沢退二郎っつったけど、徒党を組んでバトルだの宝捜しだのをしないわけで、『ゼロヨンイチロク』が『光車』に似てるとか、そういうのとはちょっと違う。まあ天沢退二郎にも児童文学にも色々あるわけで。ともあれ、作家があとがきで自註するような深…

ようやく最近の本命であるところの清水マリコ『ネペンテス』にとりかかる。良い。うっかり「しまった」って言いそうなくらい。あんまり良いので読み進めるのがもったいないぐらい。まあ一言でいえば天沢退二郎の書くような、暗い児童文学系ファンタジー、な…

桜庭一樹『GOSICK』III

正しい「萌える探偵小説」ではないかと。正しい、というのは、パロディ臭やスカした嫌味(わかるだろ?)抜きで普通に萌える、という意味で。そして、萌え描写と探偵小説的趣向がきちんと融合している点で。 今回は「電話越しに事件の話を聞いただけで解決」…

『電撃!! イージス5』(その2)

谷川流の文章は読みたいが頭と心にあまり負担をかけたくない、というニッチな欲求にピンポイントで応える『電撃!! イージス5』を読み返してたり。こんな趣向でもやっぱり谷川流だなあと思うのは例えば『この数日間、風呂も覗かなければ寝込みも襲わない、暗…

谷川流『電撃!! イージス5』(電撃文庫)

他愛なくてヌルい。そこそこ幸せ。たまにはこんなのも悪くない。さして印象には残らないがなんとなく読み返してしまう(かもしれない)。ツボはといえば、男の子がおさんどんやっているあたり──同好の士発見、ところで『イージス』の主人公って料理上手だっ…

『わが家のお稲荷さま。』3巻

悪くないが物足りない。夏が終わったのも痛い、かもしれない。もうちょっとムダな描写が欲しい。

『学校を出よう! 6 Vampire Syndrome』

そろそろ表紙を見かけるだけで幸せになってきました。いい絵です。3巻の裏表紙とか特に好きなんですがそれはともかく。 学校を出ようとするどころか、学校にいる理由が出来てしまったじゃねえか。おめでとう/クソッタレ、って気分ですよ。キャラの幸せには…

『涼宮ハルヒの暴走』

なんだか知らないが、今回はハルヒが終始やたら楽しそうである。あと『憂鬱』以来の彼女の自分語りがちょっとだけ聞けて嬉しいとか。所で世にもくだらない話をすると、アニプリ漬けのアタマだと、どいつもこいつも妹に見える。長門は千影と印象が混ざること…

『学校を出よう!』5巻

ああ、これだこれ。この嫌な感じ。この不安感。自らの属する現実の手応えが不意に見知らぬものに感じられる瞬間があるだろう。グロテスクとはそういう謂だ。吸血鬼ネタが陳腐であればあるほどこれは怖い。 ところでこのシリーズは、一作目を除けば、保坂和志…

殿がくる!

『殿がくる!』読了。ああ、パイオニアLDCだねこりゃ(誉めてます)。序盤のドタバタと中盤の温泉(違)を経て終盤のシリアスへ。あと男の子がむしろヒロイン的な役所で。OVAエルハ第一期とかそのへん。 新青春チャンネル78〜の感想があまりに気に入ったの…

マーク・トウェインといえば

http://www.creator.club.ne.jp/~jagarl/diary200405a.html#2004-5-1-1 『ハックルベリィ・フィンの冒険』も相当につらい話です。ロマンや正しさを渇望し、しかし現実には自分たちの行為が茶番にしか終わらぬことをあらかじめ承知している、といった。ユート…

カラマーゾフの兄弟

『カラマゾフの兄弟』(池田健太郎訳、中央公論社世界の名著)読了。途中までイワン萌えだったけどミーチャに鞍替え。 それはそうと、兄ふたりがアリョーシャのところへまるで恋の告白でもするかのように(そういうセリフが両方とも出てくる)語り合いに来る…

It/ストラグル

巡回先ではあまりいい評判を聞かなかったので、しばらく手を出そうかどうしようか迷っていたのだが、読んでみれば前巻よりも面白い。ある意味では当り前の話で、前巻の描写の大半が、いずれ引っくり返すことを前提に描かれているため、どうしてもうすっぺら…

『学校を出よう!』4巻が面白くてたまらない。えっと、『一月の輪舞』(星野架名)とか言っていい? いっそヤミ帽か『メメント』。ただし、メインの視点が逆。つまり、パラレルワールドを旅する側ではなく旅人を待ち受ける側の話。そうかこういうことできる…