マーク・トウェインといえば

http://www.creator.club.ne.jp/~jagarl/diary200405a.html#2004-5-1-1
 『ハックルベリィ・フィンの冒険』も相当につらい話です。ロマンや正しさを渇望し、しかし現実には自分たちの行為が茶番にしか終わらぬことをあらかじめ承知している、といった。ユートピアを目指してるはずなのにちっとも元気がない。とにかく暗い。あと、女の子が恐い。
 ちょうど再読中の小谷野敦八犬伝綺想』(ちくま学芸文庫)にいいのがあったので引用しとく。

《『ハックルベリィ・フィンの冒険』という、読んでみれば相当に暗い小説においても、トリリングが評したように川が主人公であり、二人の男はあらゆる希望を失った形で、その語義通りの不在の場所(ユートピア)を目指して流れ下ってゆく。馬琴とマーク・トウェインという対比は果たして見た目ほど奇抜だろうか。共に貧苦の中から身を起こし、片や〈金ぴか時代〉の、片や金銭至上主義の大御所時代の中で当代随一の人気作家となって、現実に〈大衆小説〉を量産しながらも、家庭生活において不幸であり、時代の風潮の中にしっくり溶け込むこともできずに、かつてあったはずの不在の江戸、過去のアメリカを追慕し、海の彼方なる母の国ユートピアを目指す少年の物語を、冒険活劇に見せかけながら綴ってしまった十九世紀のノヴェリスツ。》(「第八章 川と少年の物語」)

 ノヴェリスツ、ときたもんだ。えらく熱い調子であるがこの本はだいたいこんな感じで、終盤なんてもう涙なしに読めないのである。