『学校を出よう!』5巻

 ああ、これだこれ。この嫌な感じ。この不安感。自らの属する現実の手応えが不意に見知らぬものに感じられる瞬間があるだろう。グロテスクとはそういう謂だ。吸血鬼ネタが陳腐であればあるほどこれは怖い。

 ところでこのシリーズは、一作目を除けば、保坂和志『書きあぐねている人のための小説入門』(草思社)145頁〜(大島弓子作品のリアルさ)の、大島弓子以外の作品への悪口が当て嵌まると思った。「不意に感じたリアルさ(不安定でどこにも着地しようがない感じ)に踏みとどまっていない」「やすやすとストーリーを作ってしまい、最初のリアルな気持ちの持つ力が消えて、ただのアイデアに落ちてしまっている」
 実際このシリーズを読んでいても、「分身」とか「もうひとりの自分」について、あるいは目の前の現実への異和そのものについての描写は相当にリアルな感じがするのだけれど、謎解きや種明かしのほうは例外はあるものの基本的にあっさりと済まされがちな傾向である印象を受ける。これは僕の興味が偏っているせいかもしれないが、「奇妙な感じ」をそのままで語り損ねた結果、色々なアイデアに帰着してしまっているような。よく冗長と評される一作目だが、あれはその点ではむしろ成功していると思う。むしろカフカの『城』とかそっちの線。言い過ぎですか。

 それはそうと、宮野のことが心配で心配で。ああ、これから先、宮野さまがどのような目に会われるかと思うと…………ふふふ……あははは! ははははハははハハハははハはハハハハハ!
 間違えた。それは古橋。