中村九郎『黒白キューピッド』

 「黒白」は「こくはく」と読ませていて、もちろん告白とかけているのだろう。おまけにキューピッドと来た。つまりエロス。恥かしいわボケ(そんなネタを思いつく俺が)。

 正直、夏葉薫さんの書評に付加えることはあんまりない。メイジ可愛い、って言ってる人をあまり見かけないのが不満で更新してみた。あとメガネかけてるイラストは欲しかったっす。

 文章についていえば、なんというかまだるっこしくなくてよい。読者の解釈を追い越す速度が心地良い、といおうか。つまり、特定の視点から描写しあとは読者の想像力と解釈に委ねる(と見せて実はまわりくどく誘導しているわけだが)、なんて常道とは無縁の、おそろしく直截的で自在な、ひどくあけすけな。
 あとは川又千秋のあまりに有名なマニフェスト《“夢の言葉”とは、無意識の中でのみ使用可能であるような言語以前の言葉、象徴言語といったような意味であり、"言葉の夢”は、言語が、その固有の構造、結びつきによってだけ生みだせる反現実的世界を示します。》(『夢の言葉・言葉の夢』)を引いておけばだいたい足りるか。作中の現実を言葉によって再現ないし代用する(というのがつまり描写というやつなのだが)、のではなく、ここでは言葉は世界の建材なのである。つうか「描写」だと思って読もうとすると脳が混乱するのでおすすめしません。

 メイジはなんで男の子の部屋にのこのこやってくるんだ、と思ったけれど、こいつら中学生かそういえば。身長も同じくらいだし、体力差もそんなには。むりやり頭を冷やさせようと水道の蛇口の下に頭を押し込もうとするんだけど果たせず、仕方なく自分で水をかぶっちゃうぐらい。可愛い。