デュマ『三銃士』

 角川文庫の竹内猛訳で。アラミスがリシュリューのこと「赤頭巾」呼ばわりしてたけど、おとぎ銃士は何か関係が。

 金策と葡萄酒と賭け事ばかり。スペイン産の葡萄酒が飲みたくてたまらない。そういえばゼロの使い魔も読んでいるとやたらとワインが飲みたくなる。
 久しぶりに読むと、アトスがどうにもダルタニャンを好きすぎると思った。あとアトスが随分とだめなひとに見えた。つまりガキの頃は、ダルタニャンが倍も年上のあいての好意を得るのは不思議でもなんでもなかったし、面倒くさいことがあると引きこもって酒ばかり呑んでいるのも、それなりにかっこいいことに見えたわけだ。やたらと死ぬ死ぬ言ってるのも。もちろん、太宰か夢二かって感じでそれはそれでラヴリィ。なるほど日本人好みのキャラだよなあ。

 もちろん読んだのはゼロの使い魔の元ネタを漁るためですが。なんとなくそんな気はしていたんだけど、ヤマグチノボルゼロ魔において小説作法をもデュマから借りているのではないか、という気がする。登場人物に対するスタンスとか。作者が直接に登場人物の心中や人となりを説明しちゃうあれ。もちろんデュマは一シークエンス一視点の原則なんて守りません。むろん『小説道場』でも、つまるところそれは初心者向けの原則にすぎない、といったことは書かれているし、ついでに大デュマは中島梓の理想の作家のひとりに挙げられているわけですが。

 ダルタニャンの従者が藁の上で寝てたりしました。もちろん床の上に藁を敷いて。
 で、ゼロ魔にひきつけた読みを続けると、銃士と従者といえばもちろん問答無用に上下関係であり身分の差ってもんがあるはずなんだけど、ダルタニャンはなにしろ二十歳にも満たない子供なので、ときどきそのへんあやしくなるのがなんかこう、ねえ。まあ書いてるのは後世のデュマだから当時の感覚とひとしいとは限らぬが、危険な旅に出す前には手をとって接吻とかしちゃいます。つまり貴族が平民の手を取って。いや平民って言葉は出てこないんだけど。


 で本家ルイズたんは続編からしか出てこないんだけど、ダルタニャン物語は一冊2100円もしやがるので手が出ません。第二部以降は仕方ないので下記サイトであらすじだけ。
ttp://www.gld.mmtr.or.jp/~louis/
ttp://www002.upp.so-net.ne.jp/musketeer/

 なるほど続編はクロムウェルやフーケやコルベールの時代なのね。マザリーニ枢機卿マザランなのかしら、どちらかといえば。
 しかしルイズやアンリエッタならまだしも、シュヴルーズとかワルドとかロングビルとかスカロンとかマリコルヌとかギーシュ・ド・グラモンもデュマから持って来たか共通するわけで。てかグラモン元帥て。
 あとタバサって偽名はノリ的にはアトスとかポルトスみたいな感じですか。「そんなのは羊飼いの名前ぐらいにしかありませんからな」。シャルロットってのは無論ありふれた名前だけど、ミラディーがシャルロット・バクスンの名で流刑に処されようとしていたことを一応メモっとく。
 キュルケなんとかツェルプストーは元ネタわかんなかったです。あるのかしら。ミラディーが魔女シルセに喩えられてはいた。
 あとはモンモランシー・ラ・フェールってのはアトスの縁語で固めてあるのかしら、とか。

 ちなみに上下巻それぞれ別の古書店で買ったんだけど、上巻の表紙と口絵がアニメ三銃士でした。ミレディーが猫じゃないほうの。