『魔法少女リリカルなのは』#12・#13

#12

 フェイトはなのはをほぼ「何度も名前を呼んでくれた相手」としか記憶していない。または、なのはは随分とフェイトに話しかけたけれど、フェイトちゃんは何を言われたのかはよくわかってなくて、ただ名前を何度も呼ばれたということは認識している。というか普通わかんないよねあれじゃ。
 何度もぶつかったこと、真っ白な服を着ていること、対等に向き合ってくれたこと、何度も私の名前を呼んでくれたこと。何度も。それだけで、何かを終わらせることも何かを始めることもできる。
 
 ところで、「わたしがあなたの娘だからじゃない。あなたがわたしの母さんだから」との台詞を解説せよとの電波が飛んで来たのでやっておく。つまりこれは、たとえあなたの娘でなくとも(あなたに娘と認められなくとも)わたしはわたしである、その上でわたしはあなたを母と呼ぶ、ということだ。べつのいいかたをすると、あなたがわたしを愛していようがいまいが、わたしはあなたを愛する、ということだ。
 「それでもわたしは、あの人の娘だから」とか「母さんに認められたい」というのがそれまでのフェイトであったわけだが、それはつまるところ「愛されたい(承認されたい)」というのが先に立っていたわけである。それとは明確に違う。まあほっといても子供は自我の確立ぐらいします。
 母親に拒絶されたおかげでようやく、アルフやらバルディッシュやら白い服の女の子のことやらにも心を割くことができるようになったし、かれらの存在が支えになっているからこうしたことも言えるのだろうけれど。
 しかし僕としては、一見よくわからない台詞になっちゃってるあたりが、何よりいいと思います。なんかほら、キャラが自分の言葉で喋ってる感じがするじゃん。自分の言葉? つまり、彼女が自分なりの世界把握と言語体系に沿ってモノを言っていると、当然、ぼくらにはわかりにくくもなる。
 
 プレシアがフェイトに見せた最初で最後の微笑が意味深でした。「くだらないわ」の前ね。どうやら正気に戻っている、そういう演出に見える。だから、フェイトを拒絶したのは、あえてそうしてみせたのだと。まだフェイトを利用しようとすればできた。あるいは、そこでフェイトを受け容れたら、一緒に落ちるしかなくなる。だからフェイトを生かすためには拒絶してやる必要がある。一緒に落ちるしかない、というのは、たとえば『勇者警察ジェイデッカー』のエヴァ・フォルツォイクとビクティム、がそれなのですが。

#13

 それこそ何度も言ってしまうけれど、なのはさんはなんでそんなにフェイトちゃんが好きかね。この期に及んでも、「きれいな眼をしていて、きっと優しい」ぐらいしか判ってないのに。面食い?
 つまり、フェイトちゃんってのは、ちょっと見ただけで友達になれたらいいなと思えるような素敵な子である、と高町なのはの眼には映じたというただそれだけの話で、いちいち突っ込むべきではたぶんない。とりあえず、そのへんとりたてて説明しない脚本が優秀。