『AIR』TV版 #2

 完璧だ……(滂沱と涙を流しながら)。

 とりあえず動画──というかキャラの芝居が凄い。往人がポケットから人形を取り出す時にちょっと手間取る仕草とか、晴子が片手でボタンを外すとか酒瓶を一瞬取り損ねるとか。言い出せばきりがないくらい。魚採りが水の掛け合いっこになって最後には足が出る、とかもう胸が締め付けられるくらい効く。なんだろうこれ。

 また、キャラクターの心情に完璧に寄り添うカメラワーク(参考)といい、時間が限られているゆえの策かもしれませんが、音声と映像で並行して別々のことを語る手法といい、実にいい。説明も最小限で、弁当はさりげなく二人分だし、虫が窓にぶつかる音に気付いた直後には螢を見ているシーンになる、というスマートさ。緩急の付け方も適切で、個々のシーンの印象がちゃんと残るテンポになっている。映像的なクオリティも申し分ないし、何より、午後の陽射しの眩しさだか陽炎だかのせいで何もかも白っぽく霞むあの感じ、がちゃんと表現されている。画面に白っぽいエフェクトかけてんのかしら。ちなみに原作の背景CGはとかく白を強調していたはずだ。

 強いて不満をいえば、観鈴マップを片手に不在の観鈴を伴侶に(まるで観鈴がとなりにいるような気分で)町を回る、というシークエンスが略されていたのが残念といえば残念ですが(時間的に無理だろうけど)、TV版オリジナルの部分がそれを補って余りある。

 原作との比較? どうでもいいよそんなの──と言いたいのですが一応やっとく。まず冒頭、#1の感想でさんざん不満を述べたあの、あらかじめ手の届かぬ高みをずっと飛びつづける何者かのイメージ。そして、ここで初めて、往人は観鈴に先んじて空を見上げることになる。具体的な映像やカメラワークがあるわけではないのですが、このシークエンスのキャラの心情としてはそうなるはずです。
 これはなんというか、原作のヤバい(ムー的な)部分で、そんな直球でやって大丈夫なのか、という気になりますが、笑い出さないだけの緊張感がちゃんとある。堤防で往人と観鈴が二人きり、余計なものなどないよね。

 そして第二話全体を通しては、往人と少女たちの物語と心情が何によって媒介されるか──空にいる少女の話を介して観鈴と、空への想いや魔法を解して佳乃と、想いを込められた人形を介して美凪と──という構図がきちんと描かれているのも、原作をよく理解しているといえる。なんか偉そうに評してますが、平伏したいぐらいですよええ。

 あとはまあ、ポテトが異様に可愛い、とはどうしても言っておかねばなりますまい。「往人の人形劇そっくりの動き」を映像化するという難問に見事に答えているのも流石。