アニメ版AIRの海

 海辺の町を舞台にした作品であるにもかかわらず、ゲーム『AIR』の画面からは海がほぼ排除されている。海とは、すぐそこにあると語られるが殆ど目前に姿を現さぬもの、いつか辿り着くべきもの、であった。だから潮騒のSEだってタイトル画面でしか聞こえない。それがあの夏の迷宮を構成するための条件だ。それが全てとは言わないが。

 だがアニメ化となると、まさか海を映さずに済ませるわけには行くまい。そんなわけで、アニメ版で海がどう描かれるか、というのは重要な興味のひとつだった。

 で劇場版は未見なのだけれど、多分分っているそうなのでとりあえず安心しておく。問題はTV版だ。とりあえず#7まで観た。いや、ここまで読んでいただければ次に何を言うか想像つくと思うのだが、「間違っても」と二回書いたがつまり石原立也が間違ってる。監督がコンテ切ってる回に限って、海とみれば汽笛鳴らしながら船が横切るとか、あと、わざわざ面白そうな風景を探して撮っているようなノリがどうも鼻について仕方ない。AIRは違うだろ、と思う。

 で、こちらでも言われているように、たとえば#2はうってかわってキタノ。海はほんとうに沈黙していて、往人がひとりで、あるいは往人と観鈴でいるあいだは、海は完璧に沈黙している。ちょっと恐いぐらいに。で、しのさいかが登場したとたんに、遠くの方に小さく船影が見えたりする。やりすぎ(褒め言葉)。山本寛は多分わかっている。あとはその中間。