千年女優

 インタビュー・ウィズ・原節子。一日かぎりのインタビュー、戦中戦後の歴史とともに歩んだ大女優が自らの生涯を語り尽くす! で語られる情景を実際に映像化して見せてくれますが、このあたりの見せ方がけっこう面白い。ばらすと面白くないので紹介はしませんが。


 藤原千代子、という名はどうかすると宇野千代を連想させる。いくつになっても少女のような部分を隠し持っているあたりも。恋の形式は真逆ですが。つうか「わたし、なんだか最近、死なないような気がするんですよ」ってのがえらくツボにはまったので機会があれば触れようというわけ。


 ちなみに、女優はべつに千年生きているわけじゃない。実年齢は七十いくつだ。で「自らの生涯を語る」はずが、ばーちゃんボケちゃってるから気がつくと映画の中の話になってる。つまり、女優自身の体験と映画の中のエピソードがシームレスにつながってしまう。そのうち個々の映画がまるで、数多の前世、幾度もの転生の記憶であるように聞こえ出す。何度も生まれ変わって、ただひとりの愛しの君を追い求めているかのように。かの女優にとって、自身の過去とはそのようなものなのである。百年と生きぬ身で千年を知る。「瞬く間にも数千の朝よ訪れよ/パラレルに行く船団に全てのキミの日を乗せて」。あたりまえだが平沢進は良い。


 最後のせりふについては、救いがあっていいと思いました。あと、そもそも恋に恋するところから語り始められているわけだし。あとパーフェクトブルーとちがって、「走る」「転ぶ」「扉を開ける」といった動きの快楽に素直に身を任せることができるのがよかった。


 戦中戦後の満州や日本の風景もポイント。あと、近頃は基本的に『うた∽かた』を観てばかりいるので、鎌倉が出てくると冷静ではいられなかったり。


 なんで今頃観てるのかというと、劇場版AIRを観に行けなくて寂しい(田舎なので)から。あと、90分ってどれくらいかなあ、とか。