竹宮ゆゆこ『とらドラ2!』

 リサイクルゴミ用のバケツを枕のごとくはね上げる 虎の恐るべき脚力
 
 ごめんなさい言ってみただけです。

 逢坂が普通に可愛い。いつもギラギラしていたあの子が随分と落ち着いたというか。人間らしい食生活と住環境を取り戻したせいでしょうか。逢坂が、竜児と一緒だと息が苦しくないことも、大河、なんて名前で呼ばれて小鳩のように笑い出してしまったことも、なかったようにスルーされててさ。大河は世界一素敵な女の子だといつも言ってるだろさっさと気付け北村。
 まあ、あの子がちゃんとごはん食べていれば私はそれで満足です。当面はだけど。
 しっかしヌルくなったなあ。
 ええと、前巻は「恋と団欒のものがたり」という看板に偽りありの、眩しいほど気高いガキ共による愛と戦いの物語であったわけですが、今回は普通に恋と団欒というか、色ボケと依存というか、なんかそんな感じです。竜児くんと大河さんは、恋愛関係にはないけれど依存関係と互恵関係(かろうじて)にあるふたり。なのですが、実にこう、ねえ? 肉体的接触とか唾液の交換(p89、「ひとつの皿に盛ったおかずをともに食いあう仲なのだ」)とか、やりすぎですよおふたりさん? もういっそ兄妹? 妹の世話を焼いたり口煩く躾たり心配でオロオロしたり? 同じ水筒からお茶を飲んで、同じ皿のおかずを食って、同じ部屋でゴロ寝して、というか夜眠る時以外はほぼ一緒にいて、なんかもう、ねえ? 恋愛関係を排除するだけでかくもべたべたできるものか。
 あとは、大河が泣きそうになるとすかさず「人目があるぞ、こらえろ!」(p59)と言ったり、「大河はよく泣く生き物だが、」(p115)と述懐したりと、竜児くんはどんだけ大河の泣き顔を見てきたのか気になります、と助平しておきます。ありったけのシーツやら毛布やらをかきあつめて巣を作って、その中で丸くなって泣いちゃう、そんな生き物をほっとけるわけないじゃないですか。
 ところで新キャラは嫌いじゃないだのだけれど、それだけに、そうやって誤解で波風立たせる展開に利用しなくても、とは思いました。