荒山徹『魔岩伝説』

 再読。それというのも『柳生雨月抄』に朝鮮半島の地図が載っていたせいで、あれ見ると初期三作(『高麗秘帖』『魔風海峡』『魔岩伝説』)を読み返したくなるのです。
 この頃までは大量の参考文献が巻末に並んでるんだけど、それでもやっぱり「朝鮮忍法には北派と南派がある」なんて根も葉もない創作を混ぜずにはいられないあたり、荒山先生はすでに荒山先生なのだなあ、という。いったい身の内に何を飼っているのか。
 とはいえ大筋においては普通に面白い。今回再読した感想としては、これは荒山徹版『吉原御免状』ともいうべき力作。
 『春香伝インスパイヤの部分がけっこう普通にラヴい。天の川を模した庭園で自らを織女になぞらえるヒロイン、でも、とらわれの牽牛を救出に行くってのは逆じゃねえのというか素敵でした。あと朝鮮悪代官の悪代官っぷりが見事。