[novel]荒山徹『高麗秘帖 朝鮮出兵異聞 李舜臣将軍を暗殺せよ』(祥伝社文庫)

 柳生も朝鮮妖術もない*1けど朝鮮はたっぷり出て来る、というかそれしか出てこない、荒山徹のデビュー作。
 とりあえず、当時の朝鮮半島の雰囲気にどっぷり漬かるのにうってつけ。なんたって主人公は李舜臣だし、巻頭には地図までついている。曰く、「1597年頃の朝鮮国全図」「1597年 李舜臣が辿った赴任ルート(日付つき)」。そんなわけで、地図を見つつ、なるほど今はこのあたりか、と確認しつつ読むのがなかなか楽しかった。
 後年の作品がスーパーロボット系とすれば、本作はファーストガンダム的な面白さを備えているといえよう。カップルの大量虐殺っぷりはZガンダムですが。これなんて恋人たち?

 あとは、1597年といえば慶長の役であり、史実なので知っている人も多かろうが、李舜臣がとにかく逆境に次ぐ逆境でえらいことになっていて、それでもなんとか頑張るのがもう燃える燃える。督戦歌が沸き起こるあたりなんかもう、ガンパレかと。
 そんなわけで、なんか普通に面白かった。
 もっとも、こんな比較的地味な作品でも、「石川五右衛門は実は朝鮮人だった」なんてネタをかましてくるから油断できねえ。いやその「だから太閤を狙ったのだ」と言われても。 

*1:でもキリシタン忍法は出て来る。