荒山徹『十兵衛両断』(新潮文庫)

 やりすぎだッ!

 イン殺さんの紹介が十全だと思います。なんか付加えることないや。

 感想? 作者の人は柳生と朝鮮が好きすぎると思いました。あるいは海峡が。
 伝奇とは海峡にあり、というのが荒山徹の伝奇論で(光文社文庫『伝奇城』参照)、この方の柳生愛の半分はたぶん、柳生一族や新陰流と朝鮮とのかかわりにある。疋田豊五郎加藤清正に付き従い朝鮮に渡っているし、朝鮮出兵に従軍し戦死した柳生一族もいる。また、朝鮮人でありながら柳生姓を与えられたといわれる柳生主馬(参考)のような者もいる。というかこの手の話が出て来るたびに荒山徹の創作じゃないかという気になります。それなんて民明書房、と言いたくなるようなネタが随所にこう。個人的には「柳生武芸庁」がもっとも民明度が高い。

 とまれ、こうして見せられれば、なるほど朝鮮と柳生というのは(たぶん手つかずの)おいしそうなネタではあります。そして、どうせやるならあの柳生きってのビッグネーム、柳生十兵衛と朝鮮を結びつけねえ法はない。
 普通思いつきません。というかもはや何がやりたいのかわからない。だがそれがいい