http://d.hatena.ne.jp/otokinoki/20041222#p1への言及(id:imaki:20041223)について。「作品名と時代状況を関連付けて語る、という行為がそもそも疑問だったりしますが」と書いたあたりはちょっと筆が滑った。例えば、明治三十年代に『金色夜叉』『不如帰』がベストセラーになったことをもって、当時の読者大衆が何ゆえこれらを歓迎したか、ということを研究する文藝社会学小谷野敦『評論家入門』49頁)というものもあるだろう。小谷野敦「ファンタジー君主制の夢を見るか?」(『大航海』No.49)、それと『聖母のいない国』の『赤毛のアン』論等はそれなりに頷きながら読んでいたので、そういう行為自体を否定はしません。『成熟と喪失』が(真理性において)問題なのは、(読者が何ゆえこれらを歓迎したか、ではなく)作品で描かれた内容そのものを、いきなり時代の実状とつなげてしまっている点であるわけで。