『スカルマン THE SKULL MAN』

http://www.skullman.jp/
 しまった伝奇だ。というか、よい伝奇でした。映像センス的には新伝綺? つまり、平成009やキカイダーとは一線を画す。きっちりリファインしてるくせに石ノ森テイストの残し方が絶妙なのでこれだけでなんか賞をあげたいと思った。真耶とか。
 とりあえず第二次大戦後、朝鮮よろしく南北に分断*1された日本──というだけならまだしも、舞台となる大伴市は大陸の夢を日本に再現した」がごとき閉鎖都市。つまり満洲国。というあたりでもうなんか出そう。個人的には、弾丸列車計画が成就してたげな流線型蒸気機関車とかポイント高いです。おまけに駅でパスポートチェックしてるし! ああもう!
 昭和、旧家の因縁、新興宗教、噂の怪人、あの有名人には実はあんな過去が! とかそんな感じの。あと、幼い頃の記憶がない主人公の帰郷、とか発端からして超王道。ちなみに主人公の稼業は古きよきトップ屋でございます。
 あと、シェイクスピアとかニーチェとか聖書の一節とか出て来るあたりも、衒学的というよりはむしろ昭和の香りという感じでよろしいのではないかと。ニイチェがまだ高踏的でありえた時代。あるいは、衒学的であることが何らかの意味を持った時代。これがBLACK LAGOONなら、図書館に篭りっきりの眼鏡っ子にしか許されなかったけれど、昭和40年代なら普通にアリだ。
 作中一度も「スカルマン」という単語が出て来ない、OP曲がいかにmな70年代、等々、誉めたいことはいくらでもあるのですが、強いてまとめるならば、細部まできちんと神経のゆきとどいた傑作かと。とりあえず『空の境界』『墓場鬼太郎』とセットで観るとわりと幸せかも。ていうか俺は幸せでした。

 それはそれとして、よい妹でした。それにしても妹と伝奇はよく似合うのはなんでなんだぜ?

*1:南北境界は津軽海峡というか38度線。正直コードギアスなんかで騒いでる場合じゃなかった気が。