『SHUFFLE!』

 アニメ版『SHUFFLE!』#6ばかり観た日。久々に美しい恋の始まりを見たですよ。無論プリムラのことです。きれいな感情。ちなみに現在#16まで視聴済みです。
 プリムラが魔界を抜け出して稟のもとに来ちゃったのは、ただ稟のことを好きな誰か、の話を聞いた結果でしかない。そして、その誰かはプリムラにあの猫のぬいぐるみを渡すときに言った。「これは私の大切な思い出。最初で最後の、恋」。そして稟くんが他ならぬ自分のために新しい猫のぬいぐるみを贈ってくれたときが、プリムラが恋という言葉の意味を了解するときだ。それは誰かから聞かされた言葉が先行する一方で、それが自己にとっての了解として獲得されるのがどういうことか、という話でもある。恋という語によって自分の感情が分節されることと恋という感情を実感することは一つであって二つでない。元ネタはもしかして『奇跡の人』かしら。
 これ凡庸なライターなら、古くから持っていた猫にプリムラを拘泥させかねないんだけど、新しい猫を受け入れることがつまり自分の恋を手に入れることである、というのが綺麗です。

 なおプリムラは大好き──というより、気になって仕方がない。気になって仕方がないのは無論、先にまずプリムラが稟/楓のことをとても気にかけている(のにもうひとつ誰もそれをわかっちゃいない)、という負債の感覚によるところが大きい。遡るならホシノ・ルリではなく劇場版の大鳥居つばめ。更には他の無口キャラ、たとえば長門、との類似性も表面的にしか見出し難い。彼女の無口は溢れんばかりの他者への配慮と好意によって構成されていると僕の目には映じるが故に。いわゆる神秘的な無口キャラの「自分の世界を持っている」とか「超然としている」のとは異なり、プリムラの寡黙はいわば不器用な父親が背中で語る家族への愛情だ。それはどっぷり稟や楓たちとの関係に漬かっている。彼女が自室で人知れずアヤシゲな薬草を調合しているとき、それはべつに彼女の趣味(長門の読書のような)ではなく、ただ楓のための風邪薬を準備しているだけなのである。
 周囲のお姉さんがたの遇し方も好き。プリムラ言語化について不器用ならば、そのへん汲んであげるのが当り前であり、一方でリムちゃんが無口なのをいいことにダシにして自分たちが楽しんだり、でプリムラが迷惑そうな顔をしながらも黙ってなすがままにされてたりするのがこう。結局のところ、極端に無口な子がいても、あれはああいうやつだ、としかみんな思ってないのね。