『コードギアス 反逆のルルーシュ』

 雑感。
 9話以降の最初のナレーション(「ナナリーのために」とか)は私も引っかかります。うちのルルちゃんはもうちょっといい子です。学生救助隊(#1)だし。あとシャーリーが惚れたきっかけ(#7)とか。なんかこう、ムダに律儀というか、不正や不幸をどうしても見過ごせない、あるいは平気で見過ごしている人間を見るとついカッとなってなんかしちゃう、みたいな、難儀なとこがあると思う。坊っちゃん
 「正義の味方」については、もちろんブリタニアを潰すための方便ではあるのだが、なぜそんな方便を選んだのかは、それなりになんかある、と見ます。ブリタニアを憎むブリタニア人である以上、「民族か同化か」なんて問題機制には乗れない。でも、そうでなくとも彼はそういう問題機制は嫌いだろうと思う。何より、ブリタニアか反ブリタニアか、という図式そのものが既にブリタニアの重力圏にある。ルルーシュはおそらくそれにも苛立っている。だから、日本解放戦線やキョウトの連中をしきりと「古臭い」と評するのである、きっと。
 ブリタニアを潰したいからブリタニアを潰すんじゃないし、ナナリーを守りたいからナナリーが安心して暮らせる世界を作りたい、ともちょっと違う。ナナリーが安心して暮らせない世界は間違っているので変革されるべきだ、である。また、彼が潰したい「ブリタニア」とは政体ではなく、ブリタニア的な価値観が支配的である世界、だ。だから、仮にスザクだか主義者だかが内部改革に成功してしまえば、もしかしたら動機を失う。ちなみに言うまでもないが、父たる皇帝はルルーシュにとっての「ブリタニア的なもの」の体現者である。あるいはブリタニア皇帝のイメージによって、ルルーシュは「ブリタニア的なもの」を解している。要するに複雑で、にもかかわらずああいうナレーションになっちゃうのは、きっとC.C.が「本当のルルーシュを知ってるのは自分だけでいい」とか思って適当こいてるんです。
 
 スザクがルルーシュの「弱点」として機能しているのもいい。わかりやすくフルバで喩えると、ぐれさんにとってのとりさん。「ベスはあたしの良心」とジョーは言った(宮迫千鶴『超少女へ』)。その意味で、スザクはルルーシュの良心であるように見える。谷口監督は、あくまで主人公はルルーシュ一人でしかなく、スザクがもう一人の主人公というわけではない、とどこかで語っていた。
 
(追記)
 正義の味方。つまり、弱きを助け、強きを挫く存在。あの「正義の味方」宣言は何より、なんか社会ダーウィニズムみたいなのを国是(単に若本皇帝の趣味みたいな気もするが)とする、ブリタニア的な価値観だか世界観だかへの、公然たる挑戦である。もちろん民衆の不満や嗜好を計算に入れてのことだが(みんな大好きだろ?)、観念闘争であるには違いない。燃えます。世界を革命する力を!