『機神咆吼デモンベイン』#1

 尺が足りない。
 原作からして、等身大ヒーロー×2プラス巨大ロボット、という詰め込みっぷりなので当然といえば当然ですが。
 ここで我々は原作のそれが、そもそもが九郎とメタトロンという二種類の正義の味方が混在する猥雑な世界観であったことを想起すべきなのでしょう。アメコミよろしく正義の味方が存在するアーカムシティ。そこへさらに登場する正義の味方が大十字九郎とデモンベインです。「新手の、正義の味方だ!」という原作の九郎のセリフは今もって忘れ難い。
 かてて加えて、デモンベインはまず覇道財閥に属するのであって、アル・アジフとの出会いによってマギウス(=等身大ヒーロー)となった九郎は、アルとはまた別系統の巨大ロボットと出会い直さねばなりません。比喩的に言うならば、これが加納渚なら、イクサー1とイクサーロボには同系統で出会えるのですが*1、ここではイクサー1からイクサーロボへと至る道は絶たれており、真道トモルとレプリカオーガンとの出会い*2のごときものが、いまひとつ別に用意されねばならない。要するにイクサーとオーガンの一話を足して割らない、という程度に色々なことがある。
 つまりは尺が足りない、ということはおそらく、アニメ化したスタッフの能力如何にかかわらず不可避であり、原作がなんというか「純正な」ロボットアニメとどれほどかけ離れた代物であったか、ということを我々は認識すべきなのです。
 だがしかしアニメ版においては、とりあえずメタトロンは後景に退き、アルはアイオーンからデモンベインへと比較的ストレートに至ることになる。猥雑さや過剰さが命の作品*3を「要約」してしまう愚を犯している、なんて黒田洋介をはじめとするスタッフは百も承知だろうが、これはもう大人の事情に負けた、という悲惨さが最初から漂う。
 しかしなんだ、「未来永劫、過去永劫」とか「大黄金時代にして大混乱時代にして大暗黒時代」とか「I'm innocent rage」とかがないとえらく味気ないね。ケレン味が足りない、どうにも。それやるとまんまTHEビッグオーになっちゃうので悩ましいところかもしれないけれど、どうせアーカムシティはゴッサムシティでヌーベルトキオシティでパラダイムシティなんだし。メガデウスデウス・マキナは名称のみならず極めて似た存在だ。そもそもこいつは、紅と銀の機体の闘争としてこそ始められるべき物語であって──
 ないものねだりはこのへんにしときます。しかしナイアさんの乳はもう少し柔らかそうに描いてくれまいか。

*1:OVA『戦え!イクサー1』

*2:OVAデトネイター・オーガン』。宇宙空間で破壊されたオリジナルのレプリカが主人公の力となる、という意味ではデモンベインの先駆といえなくもない。

*3:このあたり、cherry-3d氏がとてもよいことを書かれていたのですが現在は消えてしまっている。無念なり。