現実的にリアルなFate後日談

 リンク先ネタバレ注意。今日の記事も一応。
http://sfrenatezze.com/ioriha/rnote.php?u=03otaku/irelandfate.html
 まあネタなので野暮な突っ込みをするのもアレですが、とりあえずウェールズ人に殺されそうな内容だと思ったわよ。アーサー王がアレって時点で手遅れという気もしますが。

http://www.geocities.co.jp/Bookend-Kenji/5124/welsh_history.htm

まず、ウェールズは、700年ほど前までれっきとした一つの 「国」 でした。ある日イングランドに吸収合併されてしまったのです(企業じゃないんだから)。一つの 「国」 だったわけですから、もちろん独自の文化や言語を持っていたわけです。そして今もそうです。今でもほとんど 「公国」 という感じで、ウェールズ人は完全に自分たちを独立した民族だと思っているようです。イングランド人は大嫌いなのです、ウェールズ人は。ちゃんとウェールズの国旗まであるんですよ。白と緑の生地に、真っ赤なウェルッシュ・ドラゴンが雄叫んでいる旗です。

ウェールズといえばまず、アーサー王です。誰がなんと言おうとも。瑠菜がアーサー王伝説が大好きだからこんなこと書くんだとかいう考えは一切いだかないで下さい。
有名なアーサー王は、イングランド人ではないんですよ皆さん! ウェールズ人です。誰ですかイングランド人だなんて思ってた人は(お前だろ)。アーサー王については、ショーン・コネリーの 「トゥルー・ナイト」 を観て下さい。 …あれ? 「ファースト・ナイト」 でしたっけ? とにかく、どちらかが邦題です。とても面白い映画です。
ウェールズ人の間では今でも、いつかアーサー王が帰って来てイングランドの悪の手から(笑)ウェールズを救うと語り継がれています。彼らの中ではアーサー王は死んでいないのです。しかし、夢を砕くようで申し訳ないのですが、アーサー王の話は完璧な伝説なので、実は彼は実在した人物ではありません。昔のとある猛将がモデルになった話がいつしか膨れ上がってアーサー王という人物ができ上がったのです。でもアーサー王伝説には色々な説があるので、真相ははっきりしません。

 そんなわけでアーサー王とは、七百年の独立の悲願を抱え、イングランド人を憎むこと甚だしいウェールズ人の英雄でもある、ぐらいのことはなんか言いたくなるよねあれ。
 野暮ついでに誰もが思いつくようなことを言っておくと、もともとはアーサー王は、アングロ・サクソンと戦ったブリトン人の英雄として語られ始めた。なのでアングロ・サクソンはアーサーの敵。そしてブリトン人の子孫は憎むべきサクソンどもに追いやられ、ウェールズに引きこもったりブルターニュに渡ったりすることになった。そのあいだに話はどんどん膨らんで、場合によってはアーサー王はパリに宮廷を構えローマ帝国に匹敵する大帝国を築いたりするのだが、それはまた別の話*1
 まあ、この程度はもしかしたら『Fate』作中で述べられているのかもしれませんが、Fateやってないので。それに所詮は「もともとの伝承では」だし。

追記

 というか、MacArther のArtherはつまりアーサー王では。
 ゲール語はそもそもアイルランドだけのものじゃないとか、まあ色々ありますが。ダグラス・マッカーサースコットランド系でしたっけ?
http://island.site.ne.jp/fairy/stories/arthur.html

「歴史上の実在人物としてのアーサーは、紀元6世紀の初めにサクソン人と戦って、しばしばこれを敗走せしめたケルト人の将軍であった。しかしブリテンは遂にアングロ・サクソン人のために征服せられ、ケルト人はウェイルズやコーンウォールアイルランドスコットランドへ逃れて住むようになった。また、一部は海を渡って今日のフランスの北西部ブルターニュに定住した。これらのケルト人は、いつの日かアーサーが再びアヴァロンから戻ってきて、自分たちの亡びた王国を再興してくれるにちがいないと信じていた。6世紀から12世紀までの長い歳月にわたって持続されてきたケルト人の強い願いと夢とは、やがて彼らの救国の英雄アーサーを世界最強の王者に育て上げてしまった。12世紀の「ブリテン列王史」にその輝かしい生涯を記録されたのは、この偉大な王となったアーサーである。」(井村君江著「アーサー王の死」解説より)

 というわけで、アイルランドでも普通に自分たちの英雄くさい。

追記2

アーサー王ウェールズの人だ、という話がトラックバックにきておりましたが、

 そういう話ではないのですが。ウェールズの人はそう信じているってだけで。まあ、アメリカの横暴と同穴の狢扱いまでされては、あのへんの人としては容認できないんじゃないの? むしろウェールズ人のみならずアイルランド人にとっても。
 そのへん含めてネタなのかな、とも思ったんですが。

 ただ一応言っておくと、例えばプランタジネット朝アーサー王の子孫を自称していたりしますから、そういう意味では、12c以降のイングランドによる侵略の歴史をもって、現代のアイルランド人がアーサー王に穏やかならざる感情を抱く、というのもまあ、ないとは言い切れない。
 桜ちゃんにはむしろそのへん突っ込んで欲しかったですね。あるいはいっそ「ストーンヘンジを返せ!」とか。

追記3

 やはり最初から、アイルランド人はアーサー王を自分たちの英雄だと思ってるからそれはない(と思う)、とか突っ込むべきだったかしら。英国国教会大英帝国アメリカとアーサー王を同穴の狢扱いされたらアイルランド人こそ一番怒りそうなんじゃないか、とか。
 ウェールズってのはまあ、アイルランド独立の悲願四百年ってのに対抗して出しちゃったわけですが、これは却って余計だった。
 後知恵というやつですが。

*1:以上は岩波文庫『中世騎士物語』p23〜24等を参考にした。