『LOVELESS』#1

《現実の教師たちは全て愚かで、親たちは無責任で、先輩たちは頼りなく、友人たちは信用に能わない。
 そして、女の子たちは全て、美しくなく、優しくない。
 だが、自分たちには彼らがいてくれる。》

 最初に思い出したのはそういう『密閉教室』についての文章である。原田宇陀児による。

 だめだ立夏かわいい。 
 これだよこれ、この切羽詰まった感じ。
 あと唯子がうざ可愛い。どっちやねん、と訊かれたら両方。むしろうざいから可愛い、てのはまあ視聴者の気楽さか。

 どういうわけか青柳立夏という少年は、同年代のクラスメイトたちをまるで相手にしようとしません。そのくせ、見ず知らずの美形のあんちゃんにはころっと参ってしまう。そのように見受けられます。
 ええと、つまり青柳立夏という小学六年生の男の子が転校して来るところから始まるわけですが、学校というのはどこもろくでもないもんでさ。教師は愚かで、クラスメイトはくだらない連中ばっかりだ。女の子たちは互いを利用するのに忙しく、だから寄って来るのは利用されるだけのバカぐらいです。おまけになんかうざい奴だし。
 およそ近しいものは敬意に値しない。予言者が故郷に容れられない、のと似ています。これを観念の遠隔対象性といいます*1。冗談です。ハイホー。で関心に値するのは遠いものだけです。もう死んでしまった兄貴とか。
 十二歳の小学六年生にとって、世界とはつまるところ学校と家庭のことだといっていい。そして、その両方が彼にとって何者でもないし、彼もまた何者でもない*2。少なくとも、主人公の目はそちらにはちょっと向きにくいので、草灯というのは、遠くから、彼の世界の外部からやって来るわけです。このあたり実に正しいというかラッキーといえましょう。ぶっちゃけ草灯が出てきたあたりでやれやれと安心した。だいたい、人生つまんないよ、なんて言っているガキは、とりあえず混乱させてやる必要があるのです*3。そのあたり優しい話だと思います。

 鉄柵に並んで背中を預けるシーンが好き。
 繰り返しますが立夏がかわいいです。他人の無条件の好意に馴れてなさげなところとか、ああもう!
 唯子が首から鍵を下げているけれど、これは鍵っ子ということなのかしら。ポッケだと失くしちゃうからね。

*1:吉本隆明『書物の解体学』

*2:ただし、立夏はけっこう読書家らしいので、それで救われている面はあると思われる。

*3:http://blog.tatsuru.com/archives/000850.phpを参照。「とりあえず混乱させる」という方法の成長物語は、ローゼンメイデンうた∽かた千と千尋の神隠しファーストガンダム、あるいは児童文学ファンタジーのいくつか、に求めることができよう。一方で、天澤退二郎やエヴァのように、混乱のうちに辛うじて生き延びるのみ、という話にもなりうるけれど。