『AIR』TV版 #9

 神奈が。海に。
 初めて見る海をびっくりしたように見つめ、つまさきに触れる水の感触にちょいビビリ入ったりなんかしちゃったりして!
 つまりそれはぼくらにとっても夢であったさ。そういうのを臆面もなく絵にされた日にゃ。

 たぶん唯一のキスシーン(しかも裸)。

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 AIR篇への繋ぎ方が、わりと原作とは逆のものを志向している気がします。柳也の望みと語りの先に往人が存在する、という見せ方が。そこはもうちょっと一筋縄では行かない繋がり方あるいは断絶の仕方をしてたと思うので。
 原作のSUMMER篇はほぼそれ自体で完結とは云わぬまでも自立的な色彩が強い。MOON.風に言うならば「かれらについてはそれで終わった」という触れられ方だと思う。裏葉や柳也の想いは忘れ去られ、そのままの形で継ぐ者はいない。それはかれらの問題でしかない。
 あの「ぎりぎりのバトンパス」という喩えを用いるなら、最初のランナーのことも渡されたバトンの正体もわからず自分なりに意味を見つけるしかない、そういう話ではなかったろうか。そういう話として見せているだろうか。
 ぶっちゃけ往人のを柳也の「後継」(志を継ぐ者)みたいに見せてしまうと、AIR篇で欲求不満が溜まるだけだからさあ。昔のひとは昔のひとなりに勝手にやってるだけだし、往人や観鈴はかれらなりに勝手にやってるだけ、だと思うのだけれど。SNOWや久遠の絆と違って、現代篇の誰も「過去」だか「前世」だかを思い出さないし。