山名沢湖『白のふわふわ』

 やっぱりピンと来なかった。刺さるイメージには事欠かないのだが、話のまとめ方か語り口のせいか、どこかはぐらかされたような気になる。あるいは形になりすぎている(「電話線」「夏休みが待ち遠しい」を除く)。こういうのって勝手な言い草だとは思うけど。

 「夏休みが待ち遠しい」はよくわかる気がした。「ゴールデン・ウィークの冒険」は「まるく・くるりと美化委員長」の「大掃除のつづき」みたいな感覚が好きだ。「水中メガネとプールの底」では、去年の水が残っているうちは、あそこには溺れたときの記憶がそのまま残っている気がするし、水中メガネをかけると辺りはみんなプールの底みたく見えて、やっぱり去年溺れた時のつづきみたいな気がする。こういうのは妙に心に残る。こういう感覚は上手にお話を作るとかえって薄れてしまう、かというと別にそんなことはないんだけど、僕にわかりやすいかどうかはまた別だから仕方ない。