リピュア#7-a

 ぽん、ぽこ、ぽーん。ぽーん、ぽーん!
 ……冒頭の夢のシーンだけでわたし、ごはん三杯はいけますわ。
 夢の中では亞里亞は機敏に動いているが、おそらく普段からも、他人よりテンポが遅れているとはあんまり思ってないんじゃなかろうか。ただ、なぜか知らないけど椅子取りだと負ける、という程度の認識はあるだろう。とか。
 「ぽーん」と延ばす高音が綺麗。具体的には坂本真綾「夜明けのオクターブ」の「ポ−チ」みたいに。いちばん高い声で名前を呼んで。
 ちなみに冒頭に二回、このエピソード終了時に一回、この綺麗な音が聴ける。前者は夢の中、後者は現実だがこの区分にあまり意味は無い。少なくとも亞里亞には。彼女は夢に登場する兄やと現実の兄やを区別しないしその必要もない。これを認識力学的に正しい状態といいます。べつのいいかたをすれば、社会性の獲得や適応を是とする価値観へのカウンターとして機能するであろう。野暮な言い方だが、どうも生来の不調法ゆえ他の言い方が思いつかぬ。ともあれ、花穂の「ケーキを味見程度に食べて残す」という行為が否定されないように、これも作品の側では否定されない。
 シスプリ世界がある美しさを持っているとすれば、それは亞里亞のような女の子が、そのままで、きちっと存在を認められるという点にあるのだと思う。

 どうでもいいが、法月綸太郎のとある短篇を思い出してしまった。